感覚を言葉に、言葉で感覚を

感覚を言葉にとどめ、言葉で感覚を蘇らせる

主観もいいもんだ②

今月の野口整体のクラスは、体癖3種の感覚を味わうことが中心だった。


3種の体の特徴は、消化器(胃)と身体の重心の偏り。先月習った1種と2種は上下型で、歩く時に上下に身体が動くのが特徴だけど、3種は、左右型と呼ばれるとおり、歩く時に左右に身体が揺れるのが特徴。

言葉から物事を理解するというよりも、その人の話し方や口調から物事を感じ取り、自身の自己表現方法は、言葉ではなく、感情で訴える。言語表現が得意ではなく、感情も変化しやすいので、相手の言ったこと、自分の言ったことが記憶に残らなかったりする。体感覚で生きていて、芸術家向きともいえる。

 

私は言葉を大切にしたいタイプなので、3種は言葉が通じないからイラっとしてしまうかもしれない。

実際、野口整体の先生は3種タイプなので、このクラスを受ける前、既にかなりイラっとする体験をしている。

 

個人的に施術を受けた時のことだ。

私の身体に手を置くたびに、「ひどいな」「身体がボロボロになってる」「信じられないな」とつぶやかれた。

私は、もともと健康体だが、わりと健康オタクなので、そのころは頻繁に骨格矯正や筋膜リリースに通っていた。

どうやら、健康なのに余計な施術をされてるから、逆効果で、身体に負担になって、私本来の感覚がアンバランスになっているらしかった。

しかし、患者の身体に触れて、いきなり、ひどいだの、ボロボロだの、信じられないだのという発言はありえないんじゃないか???と思った。

「ひどい」という状態の定義は何なのか、どこがどうなって、どのレベルの酷さなのか、説明が欲しかった。

 

私は失礼な言い方にならないように言葉を厳選して、メールで質問した。

すると、こういう回答が返ってきた。

「言葉で気を悪くされたなら、謝ります。ただ、私の操法を受けに来られた方の中で、ここまでかという状態の方がおられませんでしたので、そう申したまでです。」

私はそれを読んで、さらにフラストレーションが募った。謝罪よりも、体の状態の「ここまでか」というのが一体なんなのか、知りたいのだよ・・・

さらに突っ込んで質問しようとしたが、ふと、それは先生の感覚で、言葉で説明がつかないから「ここまでか」という表現になったのかもしれないと思い直し、質問をやめた。

それに、私がそれまで通ってきた整体やアロマサロンの先生は、世間話を延々としたり、仲良くなると先生の個人的悩み相談までしてくることが多かったが、野口整体の先生は、私の身体の状態を静かに真剣に見つめ、時折、気迫があり、その集中力は怖いくらいだ。

決して嘘をつかないし、適当に患者をあしらっているのではないということは確信できる。

 

この出来事がきっかけになり、私は野口整体の講座を受けることに決めた。

言葉ではない、感覚の世界とはどういうものなのか、言葉で捉える世界とはどう違うのか、そこでは何が見えるのか、好奇心が湧いてきたのだ。

 

3種の世界は、色彩感覚も豊かなようだ。

クラスでは、目を閉じた状態で、先生が私の頭に手を置いて「何色をイメージする?」とたずねた。

私はよくわからないけど、あんまり考えずに「卵色みたいな感じかな」と言った。

先生は、「そう!そうですね。」と言って、「卵色は、いつもの安心できる馴染みの色彩でしょう。 でも、今、潜在的に体が求めてる色は、濃い青色ですよ」と言って、濃紺の色紙を私の目の前に差し出した。

すると、どうしたことか、私の瞼はキュッと上がり、目が見開かれる感じがした。

私の中の眠っている小さな3種の感覚が刺激されて、身体が活性化したのだという。

 

そういえば、フルートの先生が「白か透明か、銀色の音で吹くイメージにしてね」とよく言うが、単なる言葉の比喩なんだろうと受けとっていた。

が、実際、音には色がついていて、そんな世界にフルートの先生は生きているんだろう。

 

言葉でなく、色を体で感じとる世界もあっていいし、おもしろい。