感覚を言葉に、言葉で感覚を

感覚を言葉にとどめ、言葉で感覚を蘇らせる

非日常のスペシャリスト

最近、立て続けにスペシャリストさんに会う機会があった。


自分の職場も十分にスペシャリスト集団なのだろうが、そういう頭脳プレーで情報収集して、交渉術を駆使し、タイミングの見極めなどに長けるスペシャリストじゃなくて、手も動かすスペシャリストの働く姿を見る機会は新鮮だった。

 

時系列で挙げるが、一人目は、お掃除のスペシャリスト。

職場の既婚者メンバーで評価の高いお掃除屋さんを依頼してみることにしたのだが、噂どおり、彼の入念な掃除ぶりには感服した。大手のお〇うじ本舗から独立して一人で会社を立ち上げ、一人で仕事をやってるのだが、人体に影響ある薬品は一切使わず、2カ所2万円で掃除を請け負ってくれる。


うちはお風呂場と台所換気扇を依頼したのだが、朝9時に来て、なんと、午後1時過ぎまで約四時間を換気扇掃除に費やし、昼休み休憩1時間して午後2時くらいからお風呂場に籠もること約五時間、午後7時になって、「今からお風呂場の換気扇を分解しますので、あと1時間くらいいいですかね~」と声をかけられた。

うちの風呂場はそんなに汚かったんだろうか・・・とか思ったけど、お風呂場は平均5時間かけて掃除するのが彼のやり方だそうだ。

そして、終了後、自分が作成したという実験済みの除菌スプレーをプレゼントしてくれた。

翌日は同僚が予約を入れていたので、「毎日こんなに長時間大変ですよね~」と声をかけたら、「いえ、いつもやってるので~」と全く疲労感のない軽やかな口調で返ってきた。

おかげで、分譲後16年間積もった汚れは一掃され、視界良くお風呂に入ることができて快適だ。


つくづく、大手会社のような効率性などを模倣せず、自分のポリシーを貫くスペシャリストは立派だなと感服した。

 

二人目のスペシャリストは、近所の獣医さん。


先代のニャンコは18歳で大往生したので、亡くなる数カ月前まで獣医さんのお世話になったことがなかった。が、3歳になったばかりの今のニャンコ、人間で言えば、まだ二十代だというのに、歯が一部抜けて部屋に落ちていた。

前のニャンコは死ぬまで歯のトラブルがなかったし、3歳で歯周病は早すぎると思って、すぐに獣医さんに連れて行った。

ここの動物病院は夫婦でやっていて、今回は奥さんが診てくれた。

院長のだんなさんはおっとりマイペースだが、奥さんはテキパキしている。

やはり、3歳の若さで歯の劣化がここまで早いのは、おかしいという診立てになり、別の病気も疑い、血液検査をすることになった。

猫はじっとしていないので、歯の治療も全身麻酔をすることになる。悪い歯は病原菌の巣なので、良い歯は残して、悪い歯は抜歯手術をするという方針に決まった。

ニャンコは午前中に病院に預けて、夕方に迎えに行くという日帰り手術。


手術後に奥さんから説明を受けた。

ネコ科の動物は、獲物の肉を切り裂くために歯を使うが、咀嚼せず丸飲みするので、飼い猫は、歯が無くても問題ないこと。うちのニャンコは、蓋を開けてみたら、ほぼ全部の歯がグラグラの状態だったので、犬歯を残して、全部抜歯したこと。

一見、状態が良さそうに見える歯も2本くらいあったが、ここまで歯の悪化が早いということは、また1、2年後に2本のために抜歯手術をすることになったら、猫の負担もあるし、金銭負担もあるだろうから、申し訳ないですが、私の判断で犬歯以外すべて抜歯しましたと告げられた。


私は、奥さんの判断は適切だと感じ、その判断をありがたく思った。ここで、もし、歯が無くなるのは可哀そうだからと、できるだけ歯を残す処置をしたら、さらに歯周病が進んでしまいそうな気がした。

幸い、血液検査の結果も問題なく、抜歯後もニャンコの食欲は変わらず、元気に暮らしている。

 

つくづく、最初の診立てに固執せず、総合的な面から考え、状況に応じた適切な方針転換と処置ができるのは、さすがだなと感謝と尊敬の念を抱いた。

 

そして、最後のスペシャリストは、救急隊員。


ニャンコの手術翌日、ニャンコはピンピン駆け回っているが、ぐったりしているのは夫。

本人も午前中は腹痛だと言っていたが、午後になって、単なる腹痛ではないような状態になってきた。

週末で近所の病院もやっておらず、休日に診てくれるメディカルセンターも夜間にならないと開かないということで、どうしようもなく、救急車を呼ぶことになった。


人生で自身で救急車を呼んだのは2回目である。

1回目は学生時代に弟と二人暮らしをしていた時で、その時の弟の腹痛と症状が似ているので、おそらく、夫も尿管結石じゃないかと思った。


救急車の音って、町中に反響するから目立ちすぎて気まずい感じになるけど、急いで駆け付けてくれてるんだ~って心強い気持ちにもなるもんだと今回感じた。

救急車が到着すると、救急隊員の方々がテキパキと動いてくれる。

夫に必要な質問をしながら血圧などを測る隊員、受け入れ先の病院を探してくれる隊員、運転する隊員。

そして、夫は、痛みの原因特定まではできなかったが、必要な処置を早急に受けることができた。


救急隊員にとっては日常業務なのだろうが、彼らの冷静で適切かつ丁寧な動きに魅せられた。

 

以上のスペシャリストたちの働き方、私の日常生活圏外だからこそ、心強く、頼りがいがあるように感じるのだろうが、自分の働き方を振り返り、新たな気持ちにさせられた。